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「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展 [展覧会]

人生、初フェルメールである。
まず、彼の画について語ってしまおう。

他の同時代の絵たちと決定的に違うな、と思ったのは、なんと言っても「明るさ」
である。
とにかく、他のものは、暗い物が多い。でも、この電気の無い時代の室内を忠実に描いたら、
こんな色になってしまうのかもしれない。
だから、外の光が入る窓の付近の絵が多いというのは、なんとなく納得がいく。
ただ、しかし、そのような同じモティーフを用いていても、このフェルメールの絵は
抜群に明るい。
彼の絵の解釈本などを読むと、遠近法等に忠実に描かれている部分と、あえて、
その遠近法などを破り、絵の見た目の完成度を上げる為にフェイクを用いている部分があるとある。
その意味では、この明るさは、フェイクなんだろう。
しかし、絵を生かす為に、あえて行うフェイクなのだろう。
そして、その効果は、絵の完成度を格段に上げているに違いない。
&そして、その明るさ=光を描く事に、これほど長けていて、かつ独創性をもった画家が、
同年代はおろか、歴史的に見ても希代の存在であったのだ。

その光を描く部分の為に、この絵の所を、何度も並び、離れて見て、とかなり長い時間を
費やしたが、、、、細部まで見るとなると、写真とのほうが全然いいんですよねぇ。。。
しょうがないのだろうけど、油絵特有の表面のギラギラ感で絵が反射してしまい、例えば
スカートの光の微妙な当たり方とかは見る事が出来なかった。少々さみしい。
でもね、本物を見て良く分かったが、俺が、このフェルメールの絵の光の描き方で一番好きなのは、背面の壁である。白の階調と言っても良いが、この明暗の妙は、遠くからでも良く分かった。部屋の隅から、窓の近くから、壁の下へ、上へ、この光の描写は、ちょっと信じられない。
この白=光が、フェルメールの人気だと思う。上記に書いた通り、この光もフェイクが入っていると思う。きっと、こんな風に単光で明暗が付く事はないだろう。ま、外の天気が雲とかあって微妙な変化によって、こんな明暗になる瞬間はあるのかもしれないが、その瞬間を覚えていて、それを表現する為にあらゆる考察と技巧を尽くしたのだとすれば、やはり彼は天才である。

しかし、少し冷静にもなってみた。この絵や他のフェルメールの絵も、絵としての完成度の高さは素晴らしいが、それにしても人気がありすぎじゃないのか?フェルメール。
ここで全体の事も書いてしまうが、正直、フェルメール以外、それほど見る絵って無かった。
ま、自分が印象派以降の絵が、好きなんだなと分かった訳だけど、風俗画ってやっぱり退屈です。歴史的文化的な意義はあるとは思うが、今見るとパッとしない。やっぱり流行画なんだと思う。時代ごとの流行り廃りの中で描かれているものだから、しょうがないと思う。
その範囲の中に、フェルメールも含まれてしまうんだよね。そうなると彼の絵をどれもこれも賛辞しようとは思えなくて、この人気は、絵の絶対的評価とは別の所から来ているのかもな。と
思った。少作、贋作、盗難。。いろいろな物語がこの画家にはあるからね。
そこはね、少し冷静になろう。と思った。

あの唯一無比の光が描かれている絵は、見て回りたいけどね。やっぱり。

しかし、上に少し批判めいた事を書いてしまったが、とにもかくにも、初フェルメールなのである。正直、フェルメールに恋をしていたのである。本を何冊も読み、詳しくなっていたから、上のような事が言えるのである。あの光が描かれている、今回の「牛乳を注ぐ女」よりも、技巧が上がっていると思われる傑作達も、本物をみてみたいなーーと、想像力をかき立てられました。
嗚呼!美しい絵は、ただただ美しい。


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