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雑誌記者向田邦子/上野たま子 [本]

この本の面白い所は、友人ならでは、女性ならではの感情が、客観と主観で混ざり合っている所にある。
面白い。客観的な部分と主観的な部分が、私が読むに4:6という感じで、
感情の出て方がマダラな感じで、だけど嫌な感じにはなってなくて、
男女で読後感に差が出そうで、要するに不完全な感じがあるのが逆説的に好印象であった。

前提としては、私が向田邦子は好きだが、好きな部分は御本人の文章、脚本のみで、
個人的な事はほとんど興味が無い。というのがある。(勿論、作家性と関係がある個人の特徴の部分は別です。)
この本の中から、そういう部分を除くと、若く強引で愛嬌があり人間らしい向田邦子が表れてくる。
そして、御本人達と共に時代の空気みたいなものが感じられる。溌剌と前に向かって行く感じ。
未来の方向に迷いが無い感じ。途中あまりのキラキラ具合にちょっと読むのを止めた時間があった位。

この本の書かれ方として、皆の知らない向田邦子という側面、著者本人だけが知り得た話が出て来て、それをひとつの軸としている。ひとつの軸であるので、その部分は貫かれている分、あまり気にせず読む事が出来た。ただ、その部分は私にはどちらでも、いやもしかしたら知りたくなかったのかもしれない。そう考えると気にはしているのかもしれない。

話を戻すと、女性が女性を観る視点が、赤裸裸で、そこに興味を覚えた。あまり聞ける感情じゃないからね。その冷静さに惹かれる。怖いとも思う。だけど知りたい。触れたいけど触れたくないみたいな所が、エッセイならではの中身で出て来るので(小説ではないという意味)ある爽やかさがあると思えた。それは前述の時代や本が書かれたタイミングとも関係があると思う。
ただ、それはとても個人的な感想で汲み取り方のような気もする。そこに嵌った所が、自分として、この本を読んで良かったなぁーという気持ちにさせた。

向田邦子さんは、この本の中にある編集者としての時期に、まさにスポンジのごとく色々な物を吸収する場を得て、御本人の才能と融合されて、この先々の活躍があったのだなぁと思えた。
この時、映画以外の部署に配属されていたら、本当にその先の活躍は無かったのかもしれない。
縁とは引き寄せて、引っ張るものなのですね。最近少し引っ張ってないかもしれないな、俺。。


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落語論/堀井憲一郎 [本]

1章、2章と読んでいって、「身もふたもないなぁ~」と思った。
要するに(ま、3章で御本人も言っているが)、落語を分析するという事に
あまり意味が無いという事なのだ。
でも、それをあえてやる為に本書を書いている訳で、そして、それをある程度承知して
こちらも読んでいる訳で、ま、実際それを文章化する事には意味があるんだろうな、
と思う。(自分で書いててもよくわからん。)

ただ、それ以上に3章を「観客論」という視点で書いてある所が、抜群の落語論だと
思う。
これを読んで自分自身の体験に俄然肉が付いた。
いつも、落語会に言った後に、このブログを書こうと思うのだが、言語化がものすごく難しい。
もう少しなんとかなりそうな所で、なんともならない。そう、書けば書く程離れて行く感じ。
書けば書く程、面白い事が伝わらなくなっていく感じなのだ。それをむりくり言語化したいとも
思うんだけど、それにはものすごい時間と労力と技術が必要な感じ。
この本の中にある通り、ライブの中に発生する場の気みたいなものが一番面白いので、それをパッケージするのは難しいです。。
そして、落語を語るのに出て来る個人的感情が「嫉妬」というのもなんとーなく分かる。
人と落語に行ってもね、あまりその事に関して、会話が弾まないんだよね。
話そうとすると、個人が剥き出しになってしまうんだと思う。これは後日ならなんとか
話す事が可能となると思うんだけど、直後に、一緒にライブ体験をした相手には話しづらい。
何か、どすぐろい感情までもが、出て来る感じ。生々しい感じなのだ。

そして、ライブで作り上げるという事。それが落語だという事。
これも最近では、やっと分かって来た感じがする。
大好きな小三治のDVD全集を値段の事もあるけど、なんとなく買うのを躊躇していた。
それは、DVDを観てもつまらないだろうと思ってしまう。もしくは今がつまらなくなってしまう
可能性があるからだと思う。少なくとも現役で生きている方の落語は出来るだけ生で聴こうと思う。
その初めの一歩として、声の良さを確認するのに、ポッドキャストを使う事はアリじゃないかな~
とは思っているんだけど。。。これも甘いのかな。。。声が気になった人は、大抵観に行っちゃう
けどね。。
先代文楽や志ん生や彦六は、もうしゃーないやん。聴けないんやから。でも、音の節が聴いていて
気持ちいいんでね。音楽を聴くのに近い。確かにこれとライブは別ものと考えるべきでしょう。
少なくともライブを第一として、これらの音源には接して行きたい。

この本を読むと、落語に残っている感覚のほうが、頷けるというか自分と合うような気がして、
そこを根底で好きになっているんだろうなぁと思う。死生観とか個人の強さと弱さみたいのとか
が、圧倒的に楽なんだな。それがいいんだろう。窮屈な世の中だもの。

私としては、この本で読んだ事は身には付けるがほっとんど忘れて、
ただ寄席で笑える事を大事にしたいな、いや大事に出来るなと確認出来た本でした。
年400席とかの修行は、著者に任せてね。ありがたいやありがたや。
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サウスポイント/よしもとばなな [本]

自分のテンションが悪いからかもしれないけど、ちょっとなじめなかった。。

多分、あまりに現実的なポジションが無さ過ぎるからだと思うのだが、
なんとなく想像で思うに、ハワイという場所に対抗していく為には、
登場人物達もエキセントリックじゃないと成り立たなくなってしまうのかな。
そういう視点で見ないと、なんだか、やりすぎ感が強すぎる。

ばななさんの本は、元々そういう人が多いけれど、一点、地についてたりする。
この一点というのは、自分の中に投影できる何がしがあるという事なんだけど、
今回は、なんだかそれが無かったんだよなー。
でもそれは、俺自身のせいかもしれない。。。そうなるとこれからばなな作品を読む事が出来なく
なるかも。。。それは、あと2、3作読んでみてから考える事にしよう。

そういえば、今回は、2世代で収まっている話になっている。
これも違和感というか、掴める場所が無かった事と関係していると思う。
主人公と母親、その同世代の人。たいてい、それ以外にもう1世代上の登場人物が
いるのに、それを担うのが、ハワイという存在そのものなんじゃないだろうか。

前作?「まぼろしハワイ」でも思ったけど、というか、ばななさんがハワイを大事に大事に
描いているのがわかるので、自分の中ではハワイのイメージが変わった。
要するにステレオタイプに日本人のリゾート、ハワイ。みたいな、悪く言うと、全然興味が持てない場所
だったのが、太平洋のポツンと浮かぶ、外界とはいい意味で切り離された不思議で気持ち良さそうな場所
というイメージになった。
この変化は大きい。
訪れたくなったもの。ただ他にも行きたい所はたくさんあるからなかなか順番は回ってこないかもしれない
けれど。

きっと、本当にハワイと知った時に、また読み返してみるしかないのだろう。
いつか、ハワイにも届きますように。。
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フィンガーボールの話のつづき/吉田篤弘 [本]

吉田続きになっちゃったな。
そういえば、書店でも文庫本隣通しに並んでいた。

ちょっと前に読んだ吉田篤弘さんの本が、今の心の状態に合っているような気がして、
もう一冊読んでみた。

大当たり〜!!!

どうやら、この作家は、それぞれちょっとづつリンクさせながら、本を書き続けている
ようで、前に読んだ「つむじ風食堂の夜」を書く事を考えているような話から、本書は
始まる。他の本もちら見をしたら、この「フィンガー〜」に出て来る先生が居た。
こうゆうの好き。

そして、本書は、ホワイトアルバムを巡る物語が、話の中心である。
これが!たまらん!!
上手い!楽しい!静かなワクワク!
音楽小説として、とても気持ちいい。

ビートルズというグループは、やっぱりしょうもなく、すごいバンドである。
音楽を進化させ、文化を進化させ、デザインを進化させてきたのだな。

ここの出て来るホワイトアルバムのナンバリングの話は、初めて聞いた。
俺が知らないだけで結構有名な話なんだろうな。
デリコのナンバリングは、これの真似なんだな。
それと真っ白なジャケット。それだけで話が膨らんでいくだろうな。
筆者は、1962年生まれなようだから、ギリギリ、このアルバムに間に合ったのかも
知れない。実体験が、もしかしたら、入っているのかもしれない。

この人の文章というか、トーンの気持ち良さは、すごい。
木漏れ日の中を歩くよう、というか、理想とする春と秋の心地よさのような文章である。
今、心と身体がこれをとても欲している。

これを読み始めて、ホワイトアルバムを探して、中古CD屋のレコードとCDのコーナーを
覗いているんだけど、置いてないですね。ホワイトアルバム。
一度は、たくさんの中古品もあったのだろうけど、そこから又、価値が出て来てしまっている
のかなぁ。欲しいなぁ、自分だけのナンバリング。出来ればレコードで。
気を長く持って、探そう!


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7月24日通り/吉田修一 [本]

那須への行き帰りは、本を読むのに丁度良い時間。
車より電車が好きなのは、きっと、この時間があるから。
運転は、やっぱり面倒だ。

さて、本書を持って、吉田修一は、コンプリートだと思う。
これからは、新刊にお世話になって生きなくてはならない。
まぁ、昔の短編とかは読み直してもいいな。

この本は、少しだけ敬遠していた。
映画化されたのが、その要因だが、「何か違う?」感があった。
勝手な吉田修一像の中で異色な作品に思えていたのだ。

その違和感は、読み出してからも、結局読み終わった今も、ある。
それは、きっと求めていたものが無かったから。というのが一番近いかな。
しかし、じわじわと、この作品の細部の良さも染みでてきている。

一行で描写しきるテクニックは、やはり随所に顔を出し、
なんと言っても、街をリスボンに置き換える所とか、めぐみや絵描きという人物の
挿み方の上手さ。映画化が十分に納得出来る、素晴らしい脚本だ。
あ、そうか、今これ書いてて分かった。感じた違和感は、あまりに出来の良い脚本の
ようなのだ。勿論、他の彼の本も話の作り方はかなり上手い。しかし、今回は、それが
目立ってしまっている、彼の筆力以上に。
まるでハリウッドの大作のようにきちっとしている。
ラストの停電の所が、ホントそんな感じ。「え?そこまで極端にふる??」って思った。
これ、ホント映画が似合うだろうなぁと感じた。はなから映画化をする為に本を書きに
いったのかな?

しかし、それ以上に、最後のシーンは衝撃である。
絶対的な逆転にフル展開を見せつつ、も一回フル。
ここだけは、映画的表現ではなく、文学的な表現の強みを最大に生かした手法だ。
言葉の余韻を残す。
映像でも描けるだろうけど(で、実際描いているんだろうけど)、3秒で描けるシーンでは
無いだろうな。音楽やナレーション、その後の展開を加えるなど様々な事が試みられているんじゃないだろうか。それは、確認しないといけない。
もしや、ここを強める為に、今までの全てがあるのか?と疑いたくなった。

あと、そうだ。主人公に微妙に感情移入出来なかったのも、違和感なんだろう。
女性の、いや、ジェンダーの話ではないかも、主人公の異性に対する考え方に、全然共感
出来なかったんだな。個人の考えからも、男性としても、ちょっとダメだったなぁ。
その偏狭性が、十分話に活かされていると思えるし、この程度の振り方は一般生活の一部としてものすごくリアルだと思う。ただ単に俺が女性の事を全然分かっていないだけのような気がする。

本として楽しむより、脚本を考える時の最良の書という感じです。
うむ。


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夜をゆく飛行機/角田光代 [本]

友人に借りて読む。
ぶっちゃけて言えば、「上手いんだけど、エモーションが足りない。俺には。」
という感じだった。

すらすら読めた割には、きちんと心に登場人物達が残ったし、物語としての
お話も好きだった。
ただ、これだけでは、何かが足りない。
そう、灰汁のようなもの。作家としての。
作者の顔が、性格が、見えてきそうな、はみ出した感が、無かったのだ。(これは、しかし、このお話だったからかもしれない。)

ただ、2、3カ所、ぐっと、というか、「頭にメモを取りたいな。」という箇所があったので、
それが、この人の灰汁ような気がするのだ。
結構、自分にとっても大事な事を気づかせてくれたりする事だったりしたから、
十分有意義で、いいもん貰った。とも思ったんだけど、
とっても好きな作家の場合、こうゆうシーンに出会うと、それこそ強烈な場合は、
頭をぶん殴られたみたいになるし、一瞬思考が断絶したみたいになる。
この本の場合、そこまで来なかったのだ。上にも書いたけど、
結構、最近の自分の行動とかを「治さなきゃ!」とか気づかせてくれてありがたかった
んだけどね。この灰汁をもう一度味わいたいというような中毒性のあるものでは無かったんだな。

かと言って、もちろん、つまらなかった訳では無かった。
だから、ここらへんは私個人との相性のような気がする。というかそうなのだろう。
この本を薦める事が出来る人。というのは、間違い無く自分の周りにもいますから。

一冊で決めつけるのは良くないだろう。又、チャンスを見つけて、チャレンジし、きちんと読んでみようと思う。出会った事自体は、運命なのだから。


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スティーブ・ジョブズ/林信行 [本]

日本Mac業界のカリスマ(本気でそう思っています)林nobi信行さん、渾身の著書。

Macintoshは、カルチャーを形成しているので、それこそ、そこにたくさんの人たちが集う訳で、
Appleは、そういう意味では、コンピュータを作っているのではなく、文化を成長させていると思える。例えば、Popカルチャーや印象派のような。
そして、そういう見方と共に、いや、それらを内包しつつ、一般の中の"Fun"を敷居を下げている事すら気づかせないように浸透させている。

さてさて、この本は、Steve Jobsの歴史を振り返るような作りになっているが、一番に着目しているのは、彼の「言葉」だ。
変な言い方になってしまうかもしれないが、所謂、偉人という人物達の言葉は、今の自分にはほとんど現在進行形では入って来ない。しかし、彼のお告げは、それこそ今の今、一緒に、それを見聞きする事が出来る。そして、それが本当になる瞬間も(上手くいかなった事も含めて)
立ち会う事が出来る。この現実に、そこに”立ち会う”という経験が出来る事が、どれだけ強いインパクトをくれる事か!!
そんな体験をきちんと本にまとめてくれたのが、本書である。

もちろん、黎明期の伝説は、伝え聞く事しか出来ないしろものだけど、その頃の発言から現在までを並べる事によって、彼の持つ”チカラ”が付け焼き刃でも天才でも無く、ひたすらの研磨の結果である事が分かる。(研磨って言葉、Jobsは嫌いそうだな)

この本から、私が受け取る物は、もう単純に”生きるチカラ!”だ。
正直、全然実践出来ていない事もたくさんある。
その言葉どおり生きたい!と思う事もたくさんある。
しかし、”いざ”という時に、それを知っているのと知らないのでは雲泥の差だ。

そんなチカラを素敵な編集で形にしてくれた本書に、感謝と御礼を捧げたい。
絵画のカタログと一緒に並べよう!!!


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旅する会社 平野友康 [本]

この本をここで紹介するのは、義務であり、必然である。
なぜなら、このブログを書き始めたのが、平野さんと川崎和男さんのスーパーライブを
見た時に感じた衝動だったからだ。
あの時、「自分も何か絶対始めなければならない!!」と感じ、このブログを始めた。
元々、映画等の感想は書いていたのだが、ひとつの場所で形に歴史にしようと思った。
これを期に、少々、初心に戻らなければ。

いかしたソフト会社digitalstage代表の平野さんの雑誌『マックパワー』での連載をまとめた本。
既に雑誌連載中に読んでいるのだが、まとめて読むとね、やっぱり迫るものがあります。
ものすごく単純化してしまうと、一言「楽しもうぜ!!!!!(!は五個位必要)」
という事を本人が楽しみながら、示してくれる。
これもはっきり言ってしまうと、ちょっと嫉妬する位、彼自身が楽しそう。
普通にサラリーマンやってると余計うらやましく思えてくる。
旅をしながら合宿のようにソフトウェアを開発している様は、本当にただただモノツクリの理想を見ているようでうらやましい。
ただ彼らが、自分たちの先にユーザーの楽しむ姿を見て、モノツクリをしているのもよーくわかるので、ネガなうらやましさより、ポジな巻き込まれて一緒に楽しんじゃおう♪って気持ちになってくる。そして、そのポジで貫かれている、この本は、久しぶりに自分の机の上に鎮座させる本になった。

ちょっと疲れて大切な何かを忘れている時、迷っている時、大事な決断をする前、
なんかにちらっと開いて読んでみよう!
目と身体が前を向いて、軽く肩を押してくれるだろう。
この本に出会った事というより、平野さんとdigitalstageに出会えて、もらった大切な物がここに詰まっていて、
それは、まだまだこれからも彼らと自分たちと未来を明るく歩けるように光を灯してくれるだろう!!!という気持ちになれるのだ。


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つむじ風食堂の夜/吉田篤弘 [本]

トーンに惚れる。
一個前に書いた「めがね」にも近いけれど、何も起きないけれど、物語が進んで行く。
その飄々とした流れが、時にとても優しいのだ。
何も起きないとは言え、もちろん全く起きない訳ではなく、ひとつひとつのエピソードが
ふっと見上げた瞬間の綺麗な雲のように、心に一陣の風を送ってくれる。
出てくる人たちもディテールが細かく描写されている訳でもないのに、着ている服まで見えてくるように親近感が持てる。風景もくっきりと。
そして、そこを主人公のトーンが貫いて、物語の”カタチ”を整えている。

あぁ、なんと気持ちいいのだろう!

彼らとこの街と食堂に会ってみたい!
食堂の料理が食べてみたい!
こんなに細かな描写が無い料理を、これほど心底おいしそうと思った事は、無かったのでは無かろうか。それほどまでに人と街の雰囲気がしっかりしている。

この街は、きっと、どこかにある。
奈々津さんのひとり芝居は、いつか、きっと観れるのだ!


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吉田修一 「悪人」 [本]

吉田修一の大作「悪人」、一日で一気に読了!
一気に読めて良かった!テンション全く落ちず、流れも出来て気持ちよく読めた!

今回の作品は、いわゆる吉田修一的上手さが目に付くというより(上手いんですよ、勿論)
登場人物の細かな感情描写の上手さが際立っている。
全編、一人称で語られる書き方で、その一人称が10人以上出てくる。
で、それらが、それぞれの性格、その時の感情、テンション、自己分析を
こまーかく、繊細に、文章の運びや使う言葉を吟味して書かれている。
よく、「感情移入する」とか言うじゃないですか?
そういう事じゃなくて、それぞれの登場人物の感情や考え方がどこにあるのかが、
とてつもなく直接的に理解出来る。移入ではなく理解。

個人的に感じたテーマは、正義やモラルでは括れない突き抜けた現代の生(sei)
悪人というタイトル通り、一体「悪い人」という事の概念は何なのか?を
完全にフラットな視点で描いている。そこに答えなどない。
作者は、答えを提示したい訳でも、どういう風に生きろだの説教をしたい訳でなく、
ただただ、世の中の一場面を切り取っただけだ。
そして、読者に現代の生の地図を作らせる。その地図は、登場人物が織りなす形の起伏を捉える個人個人によって、全く違ったものになるだろう。
読後にそんな事を考えた。強烈に”ぶっとい”本でした。熱い!!!


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