つむじ風食堂の夜/吉田篤弘 [本]
トーンに惚れる。
一個前に書いた「めがね」にも近いけれど、何も起きないけれど、物語が進んで行く。
その飄々とした流れが、時にとても優しいのだ。
何も起きないとは言え、もちろん全く起きない訳ではなく、ひとつひとつのエピソードが
ふっと見上げた瞬間の綺麗な雲のように、心に一陣の風を送ってくれる。
出てくる人たちもディテールが細かく描写されている訳でもないのに、着ている服まで見えてくるように親近感が持てる。風景もくっきりと。
そして、そこを主人公のトーンが貫いて、物語の”カタチ”を整えている。
あぁ、なんと気持ちいいのだろう!
彼らとこの街と食堂に会ってみたい!
食堂の料理が食べてみたい!
こんなに細かな描写が無い料理を、これほど心底おいしそうと思った事は、無かったのでは無かろうか。それほどまでに人と街の雰囲気がしっかりしている。
この街は、きっと、どこかにある。
奈々津さんのひとり芝居は、いつか、きっと観れるのだ!
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